『かぐや姫の物語』といえば、高畑勲監督による名作映画の1つですよね。
この映画はタイトルの通り、昔話の「竹取物語(かぐや姫)」をテーマにした作品ですが、原作とどのような違いがあるのでしょうか?
今回は『かぐや姫の物語』と『竹取物語』の違いについて考察してみました。
比較①かぐや姫の物語のキャラクター
まずは、『かぐや姫の物語』と『竹取物語』の違いについて見ていきましょう!映画版と古典では、ザっと比較しただけでも、こんな違いがありました。
かぐや姫の性格
原作のかぐや姫は、おしとやかな性格。まさに「深窓の令嬢」という言葉が似合う女性です。
しかし映画『かぐや姫の物語』に登場する”かぐや姫”は真逆の性格。
行動的(おてんば?)な性格で、幼少期には外で遊んでいるシーンが描かれていました。
捨丸の存在
映画版「かぐや姫」で、幼馴染として登場する”捨丸にいちゃん”。
彼はかぐや姫と再開した時、既婚者のくせにかぐや姫と駆け落ちしようとしましたね。そのため、視聴者からさんざん叩かれていました。
ただし捨丸は原作に登場していません。映画のオリジナルキャラクターです。
それにしても、名前が捨丸で、家族まで捨てようとしたって・・・名が体を表してますね。
比較②原作の帝はラブラブだった?
原作における帝とかぐや姫の関係
原作における「帝とかぐや姫との関係」ですが、2人の恋人のような関係でした。
帝はかぐや姫にベタ惚れで、3年間も和歌のやり取り(今でいう文通みたいなもの)もしていたほどです。
また、かぐや姫は月に帰る時、帝のために”手紙”と ”不死の薬” を残していきました。
好きでもない相手と文通したり、ましては不死の薬なんて残したりしないはずなので、かぐや姫はまんざらでもなかったのでしょうね。
しかし帝は、不死の薬を飲まずに燃やしてしまいます。
「かぐや姫がいないのに、長生きしたって仕方が無い」という理由で、薬を富士山で燃やすように、部下に命じたのです。
こんな風に、原作の2人は、とても仲睦まじい様子でした。
映画版だと、帝は拒絶されている
しかし映画版だと、かぐや姫は求婚してくる帝に対してドン引きしています。
かなり気持ち悪そうにしていました。
この点も、原作とは真逆ですね。
また、映画のラストでは、月へと帰る途中のかぐや姫の様子が描かれますが、原作にはこのシーンがありません。
映画のオリジナル展開ですね。
詳しくは当サイトの記事『【かぐや姫の物語】ラストで振り返る時の記憶はあったのか?』で紹介していますが、このシーンは演出が本当にステキです。
比較③月に帰る理由も原作と違いが
原作では、かぐや姫のタイムリミットは最初から「8月15日の夜」と決まっていました。
15日になったら、月から迎えが来ると確定していたのです。以下、原作のかぐや姫のセリフです。
「自分はこの国の人ではなく月の都の人であって、十五日に帰らねばならない。ほんの少しの間ということであの国からやって来たが、この様にこの国で長い年月を経てしまった。それでも自分の心のままにならず、お暇申し上げる」
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E5%8F%96%E7%89%A9%E8%AA%9E
しかし、映画版ではタイムリミットが設定されていません。
月から迎えが来たのは、かぐや姫が「地上にいたくない」と強く願ってしまったことが原因でした。
しかも、その理由は帝のセクハラ。
かぐや姫は帝のセクハラが嫌で、月の住人にSOSを出したワケですね。
つまり帝が元凶。
原作の方では恋人ポジションにいる帝ですが、映画版の帝は扱いが特殊でした。扱いというか、外見(アゴ)も特殊でしたけどね。
最初に見た時は、「学園ハン〇ム」の住人が紛れ込んだのかと思いました。
比較④求婚を断った理由にも違いが
原作の竹取物語では、かぐや姫は最初から「自分はいつか月に帰らなければならない」という事実を知っています。
だからこそ5人の貴公子に求婚されても、無理難題を突き付けて、断ったワケですね。
しかし、映画版のかぐや姫は「どの男性も好きじゃないから」という理由で断っていました。
うん、正直ですね。
比較⑤竹取物語とは罪の内容も違う
原作も映画版も、かぐや姫は月にいる時に「罪」を犯したという設定になっています。
ただし原作の方では、かぐや姫がいったい何をしたのか、どんな罪で地上に落とされたのか、ほぼ描写がありません。
▽原作の現代語訳
かぐや姫は罪を御作りになったので、このように賤しいお前の元にしばらくいらっしゃったのだ。罪の期限は過ぎた。早くお出し申しあげよ。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%B9%E5%8F%96%E7%89%A9%E8%AA%9E
一方、映画版ではかぐや姫の罪がハッキリしています。かぐや姫は月にいた頃、地球に憧れを抱いてしまったのです。
これが、かぐや姫の「罪」でした。
地球に憧れたため、罰として地球に送られてしまったのです。
まあ、かぐや姫にとっては罰どころか褒美でしたが・・・
それにしても思うだけでアウトなんて、月の世界の法律って厳しいですね。
ちなみに「かぐや姫の罪」についてネット上を調べたところ、いろいろな考察がありました。
せっかくなので、個人的に面白いなーと思った意見も紹介しておきます。
- 「罪」とは感情に憧れた事であり「罰」とは感情を知ったこと
- 自分の心に従うことが「罪」。「罰」は自分の心を殺すこと。記憶を失って去ることは周囲の人にとって彼女の死に等しい。
「地球に憧れたことではなく、そもそも感情を持ってしまったこと自体が罪」という考え方ですね。
私は、この説もありそうだなと思いました。
【豆知識】竹取物語の原作はない?
実を言うと、竹取物語(たけとりものがたり)の原作は残っていません。
いつ・誰が・どのような理由で作った物語なのか、詳細は今も判明していないのです。
「じゃあ私たちが知っている『竹取物語』とか『かぐや姫』って何なのさ?」という話ですが、これはややと複雑な話になります。
過去にいろいろな「竹取物語っぽい話」が存在していて、その中の一つが、人々の間で語り継がれるようになったのです。
その話こそ、私たちが知る現在の『かぐや姫』というお話なのです。以上、かぐや姫の豆知識でした。
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